辰巳先生の格調高い料理の話のあとでこんなタイトルは落差が大きい気がする。
産直売所で見つけたフキノトウを買って帰った。
1パック、120円から150円と安い。
私が土手を散歩しても、こんなにたくさん探せないだろう。
今年は先月も天ぷらにして食べている。
今回は、バッケ味噌を作る。
材料は、フキノトウ、味噌、クルミ これだけ。
作り方も、簡単。洗って湯がいて、水に晒して苦味をとる。(私は一晩して置く。)
水気を絞り、荒く刻み、刻んだクルミと味噌を混ぜ合わせるだけ。
味噌は、だしなどが入らない粒みそがいいような気がする。(例えばcoopのみちのくこうじみそ)
ご飯に乗せて食べても、おにぎりに付けて焼いても美味しい。
初めてこのバッケ味噌を食べたのは、20年以上前のこと。
職場の昼休みに弁当を食べている時、Hさんが
「バッケ味噌作ぐったがら、あがいん。」と勧めてくれた。
10人ほど一緒にいたので、パックにいっぱいの味噌をスプーンで取って回した。
一口食べて、大げさに言えば感動した。何だこれは!
失礼ながら、さほど期待もしないで口に入れた。強烈な存在感に驚いた。
田舎で育ったし山菜も食べ慣れていた。でもバッケ味噌はあまり記憶にない。
これは初めて食べた。子供の好む味ではないと思う。
その時、あれだけあったならスプーンでもう一つ取ればよかったと後悔した。
以来、季節になると毎年作っているお気に入りの一品だ。
瓶詰めの佃煮や、油で炒めたもの、砂糖の入った甘い味噌など色々食べてみた。
けれども、私の一押しはこのバッケ味噌だ。
後に、この味噌には別の思い出がある。
以前、夫の姉が近くに住んでいた。結婚してから何かとお世話になっていた。
結婚する前は、一人暮らしの実家の弟(私の夫)を案じて助けてきたのだろう。
結婚してからも、我が家の苦しい家計の内情を察して、
「あんだの好きな物を、買わいん。」と小遣いを何度か貰ったりした。
定年退職してから、義姉夫婦は穏やかで平和な日々を過ごしていた。
それから、10年過ぎた辺りに義兄が体調を崩し、入退院を繰り返し自宅介護になった。
その頃から、時々夕食のおかずを持っていく事があった。
うちの夕食を多めに作って持って行くだけなのだが、殊のほか喜んでくれたのだ。
介護の毎日で、疲れてもいたのだろう。これは、親切の自慢話ではない。
義兄が亡くなった後、一人暮らしになりやる気がなくなったと沈んだ様子だった。
夫は、義姉の様子を見て、「いつまでも、あの調子ではだめだ。」と怒っていた。
今思えば鬱状態だったのかもしれない。
料理もあまりしなくなったその頃、ある夕方 弁当を持って行った。
冷めないように新聞紙に包んでからレジ袋に入れた。
玄関は開いていたが、留守だった。茶の間の電気もついてなかった。
以前はこんな時刻まで他所にいるなんて考えられなかった。
一人が寂しいからと、誰かと話をしているようだ。
20分後にありがとうの電話があった。帰って来てどんなに嬉しかったかと話していた。
その日は少し気合を入れて作った弁当で、揚げ物、煮物、和え物、サラダも作った。
後で、「ほんとに美味しかった。ごちそうさまねぇ。一番美味しかったのは、あの味噌。」
詰める時に、隙間があったのでアルミカップにバッケ味噌を入れたのだ。
それぇ? と思ったけれど、妙に納得したのを覚えている。
決して豪華でも派手でもなくインスタ映えもしないだろうけれど、作って食べてみることをおすすめしたい。
加熱しない生味噌なので、長期保存はできません。
少し作って二三日で食べきるように。
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